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私はとりたててNatalie Coleというシンガーが好きというわけではない。父親が、Nat King Coleだからといって私にとってはあまり意味の無いことである。
だが心が疲れてしまったときなどに、彼女の「Stardust(1996)」という盤に手を伸ばすことがある。Natalie Coleによるスタンダードナンバーのカバーアルバムである。 とりわけ7曲目の「Love Letters」をとても気に入っている。Victor Young (1900-1956)という映画音楽作曲家によるスタンダードのラブソングである。 「Betcha By Golly Wow」をご紹介したときにも触れたが、私は基本的にスタンダードソングというものをあまり好まない。だがこの「Love Letters」は訳あって私に何度もこの曲を聴きたいという気持にさせる。 Toots Thielemans(トゥーツ・シールマンス)という82歳のご老体をご存知であろうか。 彼はジャズ、フュージョンの世界ではあまりにも有名なクロマティックハープのプレイヤーである。クロマティックハープとは右側のレバーをコントロールすることによって半音演奏が可能なハーモニカであるが、その難易度は我々の知る「ハーモニカ」の比ではなく、間違ってもクロマティックハープを「ハーモニカ」と呼んではならない。 もともとはジャズギタリストであったThielemansであるが、彼の円熟しきったクロマティックハーププレイは聴く人の心を溶かすような「音色」を奏で出し、近年ではプレーヤーの絶対数が少ないクロマティックハープ奏者として長いキャリアを積み重ね続けている。ある音楽雑誌のインタビューで彼はそのことについて問われ、「クロマティックハープのほうが楽なんだよ。ツアーもポケットにいれて移動できるから。」と答えていた。こういうレベルのプレイヤーはさすがに言うことも違う。 ThielemansがこのNatalie Coleの「Love Letters」でクロマティックハープを吹きまくっている。それが私が時折この盤に手を伸ばす理由である。 I memorize every line… And I kiss the name that you sign… And darling then I read again right from the start… Those love letters straight from your heart… このリリックの後に続くThielemansによる10小節のソロは確実に聴くものの心を溶解し、現実的にあり得ないこのリリックのオーソドックスさを全面的に肯定する。私のような屈折した人間に対しても「Love Letters」という曲を心の奥底まで浸透させるマジックをThielemansは持っている。 Toots Thielemansは白人のクロマティックハープ奏者であるが、黒人の代表的クロマティックハープ奏者であるStevie Wonderよりも円熟した「柔らかさ」と「叙情性」を持っていると個人的に思っている。 以前からの私の「Soul Musicを聴こう」の記事をお読みいただき、私を「黒人偏重主義者」と呼ばれたかたがいるが実はそうではない。Burt Bacharach、John Lennonに続いて今回はToots Thielemansという心から愛すべき素晴らしい白人アーティストについてご紹介をした。 私は「音楽偏重主義者」でありますので、お間違いなく。 次回は、「『Soul Musicを聴こう』的Michael Jackson論」について紹介いたします。
by show-zono
| 2004-10-05 23:05
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Comments(10)
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hardline1971 at 2004-10-07 09:41
Thielemansさんのクロマティックハープをぜひ聴いてみたくなりました。スティーヴィーのハープとはまたちがった「味」があるのでしょうね。
それにしても「音楽偏重主義者」とは言い得て妙ですね。わたしもそうありたいと思います。
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show-zono at 2004-10-07 14:01
hardlineさん、コメントありがとうございます。
好みの問題だと思いますが「硬質」なStevieのハープよりThielemansの「叙情的」で「柔らかい」ハープのほうが、疲れているときなどには良いと思います。 JazzだけではなくBrajirianのアーティストなどとのコラボレーションも多いThielemansです。一度、彼のハープに溶かされてみては。
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blue_koichiro at 2004-10-08 00:35
初めての出会いはオーレックス・ジャズ・フェスティバル、ジャコ・パストリシャス・ビッグ・バンドでした。
同じクロマティック・ハープと言えどスティービーの物とは違いますね。スティービーの吹くハープも大好きなんですが、シールマンの物も素晴らしいです。ジャコのライブアルバムも良く聴いたなぁ〜 と思ってアマゾンチェックしたら一枚だけ在庫あったのでオーダーしちゃいました。今日は先月オーダーしておいたマービン・ゲイなどが届いたし。「SOUL MUSICを聴こう」で触発されてアルバム買ったり買い直したりの今日この頃です(笑) それから、シールマンがプレイしている“ブルーゼット”っていう曲も素敵です。(これは彼のオリジナル?)
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show-zono at 2004-10-08 13:38
koichiroさん、コメントありがとうございます。
私もStevieのハープも大好きです。でも「Love Letters」のような「甘み」を感じさせる曲でのハープはやはりThielemansではないでしょうか。JacoのライブアルバムをAmazonで買えるなんて、いい時代になりましたよね。最近、Koichiroさんに浪費?させてしまっているみたいで申し訳ありません。 ところで、たしか今日は飲み会でしたよね。あいにくの天気ですが楽しんできてください。皆様によろしくお伝えください。
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sugar_pepper at 2004-10-08 17:08
憧れますね~、クロマティックハープ~。
楽器店に立ち寄った時に、ガラスケースにべたっと張り付いて見たりしてます。 楽器というのは、Artistによって音色が変わるからおもしろい。奥が深い。 確かにThielemansの奏でる音色には、円熟した「柔らかさ」と「叙情性」を感じます。 しかも「ツアーもポケットにいれて移動できるから。」ですか。カ、カッコイイ。。。 「Toots」という名前が付いているクロマティックハープがあるのもカッコイイ。。。 Natalie Coleは僕もあまり興味はありませんが、「Love Letters」は知ってます。 Thielemansのハープが入ることで、一層表情豊かな楽曲になってますね。 Soulからは少し離れてしまうのですが(ごめんなさい)、 彼のハープを聴きたくなった時、僕はBill Evansの「Affinity」というアルバムを聴きます。 曲や編成はまったく違うので「甘さ」はないかもしれませんが、「叙情性」はたっぷりです。 これを聴いていると、精神が追憶の旅に出発しそうになります。 「音楽偏重主義者」…。ドキッとしますね。うまいなぁ。 僕にとっては素敵な言葉です。
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show-zono at 2004-10-08 23:35
sugar_pepperさん、コメントありがとうございます。
クロマティックハープは本当に憧れます。実は私がいままで挑戦した楽器のなかで唯一「挫折」させられてしまった楽器がクロマティックハープだったんです。ですからその「難易度」はどうしても伝えたかったんです。「ハーモニカ」とは一線を画すということも。 実は今、私はBill Evansの「Affinity」を聴きながらこのコメントを書いています。Bill Evansは私が音楽に求める「屈折感」と「暗さ」と神々しいまでの「美しさ」をもったJazz Pianistです。それにThielemansとの共演はもはや「反則」以外のなにものでもないのが、この「Affinity」です。特にB面はFender Rhodes&Thielemansというところがすごい。精神が本当に追憶の旅にでかけてしまって、この3連休は帰ってこないかもしれません。 「音楽偏重主義者」同志、今後も美しい「音色」を感じ取れる大人でありたいですね。
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400tourer at 2004-10-12 01:08
ずいぶん前に、僕がトゥーツとステファン・グラッペリの記事を書いたときに
いつかトゥーツを記事にされるとおっしゃってましたね! 去年だったか、トゥーツとオスカー・カストロネヴィスのライブへ行きましたよ。 最高に素晴らしかったんですけど、歳なのか体調のせいなのか、トゥーツは メロディをしっかり吹こうとせず、かなりフェイクしていました。 もしも歳のせいなのだったら、ちょっと悲しいですね。
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show-zono at 2004-10-12 13:41
400tourerさん、コメントありがとうございます。
やっとThielemansについて記事を書くことができました。 Oscar Castro Nevesとの共演を見に行かれたのですね? >メロディをしっかり吹こうとせず、かなりフェイクしていました。 これがThielemans特有のテクニックの見せどころだったのか 歳のせいなのかは見極めが難しいところですね。(苦笑)
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ikkyuu_as_cousaku at 2004-10-27 08:15
Natalie Cole については、私は 父親とのデュエット、unforgettable を知るのみでした。Stardust も聴いてみます。
「Soul Musicを聴こう」は私にとっては、ブログを初めた6月に女プログラマさんの記事でTBされているのを見かけてからROMっていた、非常に高度な音楽評論(私的なものではあるのでしょうが)のブログでした。更新の頻度もちょうどよかったなぁと今は思っています。 さて、来年以降、「別のもの」を作られると言うことで、その際には、こちらのブログに案内などでるといいなぁと思いました。音楽遍歴、楽しみにしています。
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show-zono at 2004-10-27 13:41
不思議ですね。呼び合うものなのでしょうか?
実は私もコメントこそしませんでしたが、隠れた「一休寺」訪問者だったのです。 私の文章は屈折しているので好みが分かれるところですが、コウサクさんのように影で読んでくださる方が多かったようです。 来年以降のものは必ず「Soul Musicを聴こう」から誘導できるようにいたします。折角つかんだ「ユニークユーザー」の方々を手放すつまりはありませんので。(笑)
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